面接にいかすストレス対処法3
前回は外的対処についてお話しました。外的対処は有効なストレス対処方法ですが、思いたってすぐできない、即ち、時間が必要だったり、お金がかかったり、場所が必要だったりと、その効果を十分に発揮できない場面があります。
そこで外的対処に対する内的対処が重要になってきます。内的対処能力とは、個々人に内在するストレスに対する抵抗力(ストレス耐性)や考え方の柔軟性などを総合的に捉えた概念です。
そして、内在対処を反映するSOCという概念が注目されています。
SOCとはSence of coherenceの略称で、日本語では首尾一貫感覚といいます。SOCは、イスラエルの心理学者アントノフスキー博士により提唱された概念で、ユダヤ人の強制収容所より生還した人々を研究対象として確立されてきました。
多くの場合、病気になる人はどのような特性があるのかに注目しますが、アントノフスキー博士が注目したのは、強制収容所のような精神的にも身体的にも大きな苦痛を強いられる劣悪な環境下にもかかわらず、精神的な健康度を保つことのできた人でした。このように、どのような人が健康を保てるのかという考えを健康生成説と呼び、その中核概念がSOCと呼ばれる感覚なのです。
このSOCは主に3つの要素から構成されています。1つめは「有意味感」といい、どんなにつらいことに対しても意味を見いだせる感覚、意味を見いだす力、2つめは「把握可能感」といい、どんなことも自分の行動と結果が関連しているという感覚、さきを見通す力が、3つめは「処理可能感」といい、自分がよかれと思う行動を最後まで成し遂げられるという感覚、何とかなると考える力です。
このSOCという感覚の強さと心身のストレス反応の間に非常に強い関連があることがわかってきました。
SOCは幼少期からの生育環境に大きく左右されると言われていますがか、成人以降も日常の心理的トレーニングで成長させることができると考えられています。
さて面接でどう活用できるか。序盤のクライアントの主訴を明確にした後、またクライアントが気づいていないクライアントが抱える問題点を確認の後、問題解決、方策の提案をしていく時に、SOCの考えはとても有効です。
例えば、「今の仕事がつまらない。」、「今の仕事は自分の希望ではない。」、「この仕事を続けても何もならない。」などのクライアントに対して、本当にそうなのか、今の仕事は本当に意味がないのか考えてもらい、自分自身を見つめてもらう考えの拠り所となるのがSOCの考えです。
意味のない仕事はなく、どんな仕事でも意味を見出すことが職業生活を豊かにすることにつながります。転職を繰り返すクライアントや安易に転職を考えているクライアントには活用できると思います。
そんなクライアントにはこう話してはどうでしょうか。
「今の仕事のどんなところがつまらないのですか、具体的にお話していただけますか」
「この仕事を続けても何もならないと思われる理由は何でしょうか。」
そして、クライアントの考えが本当なのか、矛盾はないのか、一緒に考えていくというプロセスになるでしょう。
次回からは、この内的ストレス対処能力を示すSOCをどのように育てていくか詳しくお話します。